邯鄲堂の寝言

鳥取市内の古本屋「邯鄲堂」の店主の四方山話

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邯鄲堂ができるまで

5月初めに今町での営業を終了し、6月も終わろうかという頃に吉方町で新しいスタートを切った邯鄲堂。
諸事情から、お客さんへの正式な移転のお知らせは少し遅くなってしまいましたが、実は移転計画自体は約一年前から少しずつ動き出していました。

発端は、鳥取出身で、今町の邯鄲堂のお客さんでもあった徳永青樹さんと藤原一世さんからの提案でした。
お2人は長野を拠点とする建築や空間づくりを手掛けるユニット“グランドライン”のメンバーで、当時2人で里帰り中に邯鄲堂に立ち寄ってくれたのですが、一度店を出ていったあと、数時間後に再来店されて、やや改まった様子で切り出されたのでした。

そのときの提案を私が勝手に要約すると、おおよそ以下のようなことでした。
「僕たちの祖父母(お2人はいとこ同士)が昔住んでいた家が吉方町にある。元々商店を営んでおり、昔は近所の人が気楽に出入りする開かれた場所だったが、商店を閉めて改装し、人の出入りが少なくなってからは、すっかり閉じた空間になっている。
今、建築をやっている身でもあり、自分たちの幼少期の原体験が詰まった建物の現在に常々納得がいっていなかった。
突然の提案で失礼なこととは承知しているが、あの空間に邯鄲堂が入ればと想像すると勝手に盛り上がってしまい勢いで即交渉に来てしまった。
無理な話かもしれないが、リノベーションについては自分達で責任をもつので、考えてみてもらえませんか。」

確かに寝耳に水のようなお話でとても驚きましたが、邯鄲堂自体が元々「勢い」だけでできてしまったような店なので、なんとなくお2人の話に共感し、お金も計算も何もないくせに「面白そう」とだけ思ってしまったのです。
価値観やセンスに共感できるところの多いお2人からの折り入ってのお話だったので尚更でした。
誘われるままその日のうちに件の物件を見せてもらいに伺い、私の中にも何かぽっと灯が点ったように感じました。
幸いにも、建物のオーナーである尾崎さんにも温かく承諾・応援していただき、移転計画が動き出したのです。2014年の7月はじめのことでした。

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移転の約束を交わし、翌8月、長野からとんぼ返りしてきた2人が既存の壁の取り壊しにかかった頃。

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骨組みだけになり、商店を営んでいた頃の土間や漆喰壁があらわになりました。
邯鄲堂としての新しい入り口が出来ていきます。

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店主の帳場が完成。

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後に邯鄲堂になる外装が完成。ここまでを徳永さんと藤原さんの2人だけで作り上げました。
(店主も、なにかいろいろ塗ったりだとか……ちょっとだけお手伝いしました。)
お2人は長野で仕事があるため、ここから約半年間工事はお休みに。

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翌2015年3月、徳永さん、藤原さんはじめグランドラインの5人のフルメンバーが長野から来鳥し、内装にとりかかりました。
棚に使っているのは長野から運んできた栗の古材。
(店主も古材をたわしで洗ったりとか……ほんのちょっとだけお手伝いしました……)

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完成。

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本が入る前のすっきりした姿も、懐かしさと新しさがないまぜになったような美しい空間でした。
この間に、今町の初代邯鄲堂は店じまいの準備に入り、5月に閉店。その後引っ越し作業が始まりました。

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そして2015年6月、邯鄲堂の移転オープンを見届けるため、再びグランドラインの5人が鳥取に来てくれました。
天井まで本でいっぱいになった邯鄲堂を初めて見た5人、声を上げて喜んでくれる姿に私も胸がいっぱいになりました。
開店前日、最後の未完成部分だった店の看板が完成。

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邯鄲堂を手掛けたグランドラインの5人。
左から 徳永青樹さん、藤原一世さん、鷹見秀嗣さん、矢崎典明さん、長久保恭平さん。

徳永さんと藤原さん以外は県外出身で、初めての鳥取を無償で、その時間のほぼすべて邯鄲堂の為に過ごしてくれました。
若者5人がワイワイと作業する活気あふれる現場は、工事中から近所の皆さん(特に子どもたち)の興味の的だったようです。
建物だけでなく、5人の気さくな人柄が邯鄲堂の“場”の礎を作ってくれたような気がしてなりません。



最後に、開店以来2年半お世話になった今町の邯鄲堂のこと。
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引っ越し作業中の今町邯鄲堂の店内。

本当に自分ひとりだけで棚も何もかもを用意した不器用な工作のような店でした。
懐大きく、きっぷがよく、店子の私を心配し応援してくれた大家さんであり、お魚の美味しい小料理屋‟呑龍”の大将・東田さんと奥さん。
松下会長はじめ、優しく見守ってくださった大平線通り商店街の皆さん。
皆さんのおかげで、邯鄲堂は2年半をのびのびと営業することができました。このご恩は一生忘れませんとお芝居なんかでよく聞きますが、本当にそんな気持ちです。有難うございました。

そして、常連のあの方やこの方はじめ、店に来てくださるお客様。
どうぞこれからも暇つぶしに来てください。
来ていただくたびに面白い店でありたいと思います。

| 邯鄲堂のたてもの | 13:21 | comments(-) | trackbacks:0 | TOP↑

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